ATR（Average True Range）とは？基本的なテクニカル指標の解説

FX取引を始めたばかりの方にとって、テクニカル指標は非常に重要な要素です。テクニカル指標は、過去の価格の動きから将来の相場を予測するための情報を示す値です。

その中でも、ATR（Average True Range／真の値幅の平均）は特に初心者にとって重要な指標と言えます。

ATRはその名の通り、相場の変動幅を表す指標です。具体的には、一定期間の高値と安値の差を計算し、その平均値を求めます。この値が大きければ大きいほど、相場の変動が激しいと言えるでしょう。

それでは、なぜATRが初心者にとって重要なのか見ていきます。

ATR（Average True Range）が初心者にとって重要な理由

ATRが初心者にとって重要な理由は、ATRがトレンドの強さを示す指標であるためです。

相場が激しく変動している時は、利益を上げるチャンスも大きくなると考えられますし、その分リスクも大きくなるといえるでしょう。ATRは利益のチャンスを知ったり、リスク管理に役立てたりすることができる指標なのです。

ぜひこのページを読んでATRについて正しく理解し、トレードに役立てていきましょう。

• ATRの計算方法は？
• ATRの解釈方法は？
• ATRの利用方法
• ATRのメリット
• ATRのデメリット

ATRの計算方法は？

ATRは、以下の手順で計算されます。

• 一定期間（通常は14日間）の価格変動幅を計算するために、各日の以下の3つの値を比較します。
  – 当日の高値（H）と前日の終値（PC）の差
  – 当日の安値（L）と前日の終値（PC）の差
  – 当日の高値（H）と安値の差（L）
• それぞれの日の価格変動幅を合計し、期間の値で割って平均値を求めます。
• これにより、一定期間の平均的な価格変動幅が得られます。

具体的には、以下の計算式で求められます。

TR = MAX(H – L, ABS(H – PC), ABS(L – PC))
ATR = SMA(TR, n)

ここでは、Hは当日の高値、Lは当日の安値、PCは前日の終値です。TRはTrue Range（真の値幅／真のレンジ）と呼ばれる値であり、当日の値動きの幅を表します。ATRはTrue Rangeのn日間の単純移動平均（SMA）で求められます。

ATRの解釈方法は？

ATRの値は通常、価格の変動幅を表すために使用されます。これを利用して、トレンドの強弱やボラティリティの変化を判断することができます。

ATRの値が高い場合、市場のボラティリティが高いことを示しています。つまり、価格が大きく変動する可能性が高いことを意味していて、これは、相場が活発であり、急激な価格変動が予想されることを示しています。

逆に、ATRの値が低い場合は、市場のボラティリティが低く、価格の変動が緩やかであることを示しています。

また、ATRの値はトレンドの強弱を判断するためにも使用されます。トレンドが強い場合、ATRの値は高く、一方でトレンドが弱い場合、ATRの値は低くなります。

ATRの利用方法

ATRは、主に以下の3つの方法で活用されます。

• ボラティリティの把握
• ストップロスの設定
• エントリーポイントの判断

ボラティリティの把握

ATRは、相場のボラティリティ（変動性）を把握するための指標です。ボラティリティは、相場の変動幅が大きいほどリスクも高まります。

初心者の方は、ボラティリティの高い通貨ペアや時間帯での取引は避けることがおすすめです。

ATRの値が高い通貨ペアや時間帯では、価格が急激に変動する可能性が高くなりますので、慎重な取引を心がけましょう。

ストップロスの設定

ATRは、ストップロスの設定にも役立ちます。ストップロスは、損切りのために設定する注文です。ATRの値を活用すれば、相場のボラティリティに応じた適切なストップロスの設定が可能になります。

ATRの値が大きい場合は、ストップロスの幅を広めに設定することで、相場の変動に対する余裕を持たせることが可能です。

逆に、ATRの値が小さい場合は、ストップロスの幅を狭めに設定することで、リスクを抑えたトレードができるといえるでしょう。

エントリーポイントの判断

ATRは、エントリーポイントの判断にも活用されます。エントリーポイントとは、取引を開始するタイミングを指すものです。

ATRの値が高い場合は、価格の変動幅が大きいため、トレンドの明確化が容易になります。そのため、トレンドフォロー戦略に基づいた取引が有効です。

一方、ATRの値が低い場合は、価格の変動幅が小さいため、レンジ相場での取引が適しています。相場がレンジ相場になっている場合は、節度を持って取引を行いましょう。

ATR（Average True Range）のメリット

以下では、ATRのメリットについて詳しく解説していきます。

• ボラティリティの測定に優れている
• トレンドの判断に役立つ
• リスク管理に役立つ
• エントリーポイントの判断に有用

ボラティリティの測定に優れている

ATRは、市場のボラティリティ（変動の度合い）を測定することができます。ボラティリティは、トレーダーにとって非常に重要な要素であり、取引戦略の選択やリスク管理に大きく関わってくる要素です。

また、ATRは、過去の価格変動幅の平均値を計算することで、特定の通貨ペアや銘柄のボラティリティを示します。これにより、トレーダーは市場の変動の大きさを把握することができ、取引のタイミングやポジションサイズの設定などをより正確に行うことができるでしょう。

トレンドの判断に役立つ

ATRは、トレンドの強さや逆転の可能性を判断する際にも有用です。ATRが高いほど市場は活発であり、トレンドも強くなる傾向があります。

トレンドフォロー戦略（※1）を採用しているトレーダーにとっては、ATRを使用することでトレンドの強さを確認し、エントリーやポジションの保持の判断を行うことができます。

ATRが低い場合はレンジ相場や相場の停滞が予想されるため、逆張り（※2）を採用するトレーダーにも参考になる指標といえるでしょう。

※1）トレンドフォロー戦略…トレンドに追随してトレードをする方法。トレンドが上昇相場であれば「買い」、下降相場であれば「売り」を選択する戦略のこと。

※2）逆張り…上げ相場の時に「売り」、停滞相場の時に「買い」を選択する戦略のこと。

リスク管理に役立つ

ATRは、リスク管理においても重要な役割を果たします。ATRを利用することで、相場のボラティリティや価格変動の範囲を把握することができます。これにより、トレードの際のリスクを適切に評価し、ポジションサイズやストップロスの設定を行うことが可能です。

例えば、ATRが大きく上昇している場合は、価格の変動が激しいことを意味します。そのため、リスクを最小限に抑えるためには、ポジションサイズを小さくしたり、ストップロスの幅を広げたりする必要があるでしょう。

逆に、ATRが低い場合は、相場のボラティリティが低下していることを示します。この場合には、リスクを増やした戦略でトレードしても良いかもしれません。

エントリーポイントの判断に有用

ATRは、エントリーポイントの判断にも便利です。ATRを利用することで、エントリーポイントとなる価格の範囲を把握することができます。

例えば、ATRが高い時には価格の変動幅も大きくなるため、エントリーポイントをより広い範囲に設定することが可能です。逆に、ATRが低い時には価格の変動幅も小さくなるため、エントリーポイントをより狭い範囲に設定するといいでしょう。

ATR（Average True Range）のデメリット

このように非常に便利なATR指標ですが、いくつかのデメリットも存在します。順番に見ていきましょう。

• 急激な相場変動に弱い
• ボラティリティの過小評価と過大評価が発生する
• ボラティリティの偏りが生じる
• データの選択と期間の設定により解釈にばらつきが生じる

急激な相場変動に弱い

ATRは、過去の価格データを基に計算されるため、現在の市場状況に対して遅れた情報を示すことがあります。市場のボラティリティが急激に変動した場合、ATRはそれに追いつくまで時間がかかるため、相場の急変を判断することは難しいでしょう。

ボラティリティの過小評価と過大評価

ATRは、一定期間の価格の変動幅の平均値を計算するため、ボラティリティの過小評価や過大評価が起こることがあります。特に、相場のトレンドが強い場合には、ATRが過小評価し、逆に相場がレンジ相場に転換した場合には過大評価する傾向があるでしょう。

これにより、適切なエントリーやエグジットのタイミングを見失う可能性があります。

ボラティリティの偏りが生じる

ATRは、過去の価格データを基に計算されるため、その期間におけるボラティリティの偏りが生じることがあります。特に、価格が急激に変動した期間や相場が静かな期間が含まれると、ATRが正確なボラティリティの計測を妨げる可能性があります。

これにより、実際の市場のボラティリティを適切に把握できず、判断ミスを引き起こす可能性があるでしょう。

データの選択と期間の設定により解釈にばらつきが生じる

異なるデータや期間を用いてATRの値を計算した場合、その結果や解釈にばらつきが生じる可能性があります。そのため、データの選択と期間の設定には慎重に取り組みましょう。

ATRを正しく理解し、適切に活用してトレードに役立てよう

ATRの計算方法や使い方について詳しく解説しましたが、これだけでATRを完全に理解することはできません。ATRを活用するためには、実際のチャートを観察し、様々なパターンや相関関係を学ぶ必要があります。

また、ATRは他のテクニカル指標と組み合わせて使用することも可能です。例えば、移動平均線との組み合わせや、ボリンジャーバンドとの組み合わせなど、ATRを補完する指標を使うことで、より精度の高いトレードが可能となります。

ATRを使ったトレードを行う際には、しっかりとリスク管理を行うことが大切です。ATRは市場の変動幅を示す指標ですが、それだけでトレードを行うことはできません。適切なポジションサイズやストップロスの設定を行い、リスクを最小限に抑えながらトレードを行いましょう。

ATRを正しく理解し、活用することで、より効果的なトレードが可能となります。FX初心者の方でも、しっかりと学んで実践すれば、安定した収益を得ることができるでしょう。ぜひ、ATRを用いたトレードに挑戦してみてください！