FX取引において、市場の動きを的確に予測するためには、トレンドの方向性や強さを把握することが重要になってきます。そのための強力なツールとして知られているのが、「ATR」と呼ばれる指標です。
ATR(Average True Range)とは、市場のボラティリティ(変動性)を図るための指標で、市場がどれだけ動いているかがわかったり、トレンドの力を測ったりすることができます。
FXトレーダーにとって、トレンドの予測やエントリーポイントの判断に役立つ重要なツールです。
基本的な概念から丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
ATRの意味と見方
まず、ATRの見方について確認していきます。ATRは市場のボラティリティ(変動性)が大きい時に値が高くなる指標です。そのため、高い値を示している場合、トレンドが引き続き持続すると判断することができます。
次の2つのパターンを見てみましょう。
- 価格が上昇していてATRが上昇している時
- 価格が下降していてATRが下降している時
価格が上昇していてATRが上昇している時
価格が上昇していてATRが上昇しているとき、上昇する勢いが強いと判断できるため、「買い」のポジションをとることができます。
価格が下降していてATRが上昇している時
価格が下降していてATRが上昇しているとき、下降する勢いが強いと判断できるため、「売り」のポジションをとることができます。
ATRはさまざまなトレード戦略に活用されていて、特にエントリーポイントの判断やストップロスの設定に役立ちます。ATRの値が急激に変動することもありますが、これは市場のボラティリティが高まっていることを示すため、トレーダーにとっては注目すべきポイントです。
ATRの計算方法
ATRは、一定期間の価格変動幅の平均値を求めることで計算されます。具体的な計算方法は以下の通りです。
- 一定期間の日数を設定します。一般的には14日間がよく使われますが、好みや取引スタイルによって変更することもできます。
- 各日の高値と安値の差(True Range)を計算します。True Rangeは、当日の高値と安値、前日の終値との差のうち、絶対値が最大のものを採用します。
TR = MAX(|当日高値-当日安値|,|当日高値-前日終値|,|前日終値-当日安値|) - 計算したTrue Rangeを指定した期間分だけ合計し、期間で割って平均値を求めます。これがATRの値となります。
ATR = TRのn日間の移動平均値
FX ATRのメリット
以下に、FX ATRのメリットを紹介します。
- 市場のボラティリティを測定できる
- トレンドの力を測定できる
- リスク管理に役立つ
- ボラティリティの変化を把握できる
- 短期取引でも長期取引でも役立つ
市場のボラティリティを測定できる
ATRを用いることで、過去の値動きからの平均的なレンジ(値動きの範囲)を計算することができます。これにより、市場がどれくらい動きやすいのかを把握することができます。
ボラティリティが大きい市場では、より大きな利益を狙うことができますが、リスクも高くなります。逆に、ボラティリティが小さい市場では、相場の変動が少ないためトレードの機会は限られるでしょう。
トレンドの力を測定できる
ATRは、トレンドの強さを測定するためにも利用されます。
ATRの値が大きい場合は、相場が強いトレンドにあることを示しています。逆に、ATRの値が小さい場合は、相場が弱いトレンドにあることを示しています。
これにより、トレンドフォロー戦略やトレンド反転戦略など、自身のトレードスタイルに合わせた戦略を立てることができるでしょう。
リスク管理に役立つ
トレードにおいては、リスクを最小限に抑えることが重要ですが、ATRは、リスク管理においても非常に役立つツールです。
ATRを使うことで、トレードのエントリーポイントやストップロス、利益確定ポイントを計算することができます。ATRの値を基に、相場のボラティリティに応じた適切なポジションサイズやリスクリワード比率(※)を設定することができます。
※リスクリワード比率:1回の取引での利益と損失の比率
ATRの値が上昇する場合は、相場のボラティリティが高まっていることを意味します。リスクが高まっている状況では、保有しているポジションのリスク管理をしっかり行いましょう。
ボラティリティの変化を把握できる
ボラティリティの変化を把握するための指標としても活用されるのがATRです。相場のボラティリティは、時期や経済の状況によって変化するため、常にモニタリングする必要があります。
ボラティリティが高まると、トレードの機会が増えるため、アクティブなトレードが可能となります。逆に、ボラティリティが低下すると、トレードの機会が少なくなるため、慎重に取引を行う必要があります。
短期取引でも長期取引でも役立つ
ATRは、短期取引・長期取引、両方の場合にとって役立つツールです。短期取引では小さな値動きを利用して素早く利益を上げることを目指しますが、長期取引の場合は、大きな値動きを捉えて長期的な利益を追求します。
ATRを使用することで、どの時間軸でトレードするかを決定することができます。ATRの値が大きい場合は、短期トレードに適していると言えます。逆に、ATRの値が小さい場合は、長期トレードに適していると言えます。
自身のトレードスタイルや目標利益に合わせて、適切な時間軸を選択しましょう。
以上がATRのメリットです。ATRを活用することで市場のボラティリティやトレンドの力を把握し、リスク管理を行ったトレードを心がけることがおすすめです。
ATRのデメリット
ATRを使用する際にはいくつかのデメリットが存在します。以下では、ATRのデメリットについて詳しく説明します。
- 市場の急変時の判断に弱い
- 適切なパラメーター設定が難しい
- トレンドの強さを正確に測れない場合がある
市場の急変時の判断に弱い
ATRは、特定の時点でのボラティリティを計算するため、市場のボラティリティが急激に変動する場合には、適応しづらいというデメリットがあります。
特に、重大な経済指標の発表や政治的なイベントなどが発生した場合には、市場のボラティリティが瞬時に変化することがありますが、ATRはその変動に追従することが難しいです。
市場が急激に変動する場合には、ATRの示す値が実際のボラティリティと乖離する場合があることを頭に入れておきましょう。
適切なパラメーター設定が難しい
ATRの計算には、期間の設定が必要です。期間の選択はトレンドやボラティリティの測定において非常に重要ですが、すぐに適切な期間を決めるのは簡単なことではありません。デモトレードを繰り返し、自分に合った期間を見極めましょう。
特に、短期間でのトレードを行う場合や、長期間の市場変動に対応する必要がある場合には、より慎重なパラメーターの選択が求められます。
トレンドの強さを正確に測れない場合がある
ATRは、トレンドの力を測るための指標ですが、必ずしもトレンドの強さを正確に反映するわけではありません。
特に、市場が一時的に急激な変動を示す場合や、相場が一時的に停滞する場合には、ATRがその変動を適切に捉えることができず、トレンドの強さを過大または過小に評価することがあります。
そのため、ATRを使用する際には、他のテクニカル指標やファンダメンタル分析との組み合わせが重要となります。
ATRの注意点・初心者が気をつけるべきこと
ATRを使用する際の注意点を見ていきましょう。
- ATRの値が異常に高い場合の対応策を考える
- ATRの値の変化に注目する
- ATRの使い方に慣れるためにデモトレードを活用する
ATRの値が異常に高い場合の対応策を考える
ATRの値が異常に高い場合、相場が急激に変動している可能性があります。初心者がATRを使う際には、このような場合の対応策を考えておくことが重要です。
例えば、リスク管理の観点からポジションサイズを小さくするなど、相場のボラティリティに応じた対応策を取ることが求められます。
ATRの値の変化に注目する
ATRの値は、相場の変動に応じて変化します。その値の変化に注目し、相場の動きの変化を把握することが重要です。
例えば、ATRの値が急上昇した場合は相場のボラティリティが高まっていることを意味し、トレードのリスクが高いことを示します。リスク管理をしっかりしてトレードを行いましょう。
ATRの使い方に慣れるためにデモトレードを活用する
ATRの使い方をマスターするためには、実際のトレードでの経験が必要です。デモトレードを活用して実際の相場の動きとATRの値の関係を観察し、使い方に慣れることが大切です。
これらのポイントに気をつけながら、ATRを使ってトレンドの力を測り、市場の動きを的確に予測していきましょう。初心者でも理解しやすい指標であるATRを活用することで、より効果的なトレードが可能になります。
ATRを使ったトレード戦略
ATRを使った実際の戦略を紹介します。
トレンドフォロー戦略
- ATRを計算するための期間を設定します。一般的には14日間が使われますが、短期のトレードを行う場合には5日間など、より短い期間を設定することもあります。
- ATRの値が一定の基準値を超えた場合、トレンドが強いと判断します。
- トレンドが強い場合は、上昇トレンドならば買い、下降トレンドならば売りのポジションを取ります。
- ポジションを取った後は、トレンドが継続している限り保有し、トレンドが終了したと判断した場合に利益確定や損切りを行います。
逆張り戦略
- ATRを計算するための期間を設定します。
- ATRの値が一定の基準値を下回った場合、トレンドが弱いと判断します。
- トレンドが弱い場合は、逆張りのポジションを取ります。上昇トレンドならば売り、下降トレンドならば買いのポジションを取ります。
- ポジションを取った後は、トレンドが継続している限り保有し、逆張りのポジションが利益を出せなくなったと判断した場合に利益確定や損切りを行います。
ATRを使ったトレード戦略は、トレンドの力を測るための指標であるため、トレンドが継続する限り利益を積み上げることができます。
しかし、トレンドの転換点を見極めることが難しいため、慎重に取引を行う必要があります。また、ATRの値が大きい場合はリスクが高まるため、適切なリスク管理が必要です。
ATR指標を活用してトレンドの力を把握し、トレードに役立てよう
今回は、ATRを使ったトレンドの力を測る方法についてご紹介しました。
ATRは、市場の動きを的確に予測するための重要なツールです。その値を見ることで、トレンドの強さや変動の幅を把握することができます。
ATRはトレードのリスク管理にも役立ち、トレードする際のポジションサイズやストップロスの設定に活用できるので、損失を最小限に抑えることができます。
ATRを使ったトレンドの力を測る方法は、初心者の方でも比較的簡単に理解できる指標です。ぜひチャート上にATRを表示させてみてください。市場の動きをより的確に予測できるようになりますよ。
しかし、ATRだけに頼ることは避けるべきです。ATRでトレンドの力を測るだけでなく、必ず他のテクニカル指標や分析も併せて行ってください。さまざまな情報を総合的に考え、トレードの判断を行っていきましょう。
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